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アバター [映画関連]

2009年 ジェームズ・キャメロン監督

IMAXシアターにて観賞。事前に調べたところ、
・できるだけ大きな画面で、視界の8割を画面が占めるくらい、前の方の座席に座るといい。IMAXシアターは大画面で音もいいのでおススメ
・XPand方式の3D眼鏡は重くて大きく、ずれてきたり疲れたりするが、IMAX方式の3D眼鏡は軽い
という記述が見つかったので、IMAXシアターを選んだ。結果大正解。全く疲れることなく、3Dの奥行きを文字通り体感できた。

物語は割と古典的。「未開の地」に侵入してきた「文明人」のうち1名が「未開の部族」に入り込み、最初は敵対していたはずがやがて部族の味方となって活躍する話。西部劇や、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」「ラストサムライ」と同じ構図である。
侵略者である「文明人」というのは要するに白人であって、「未開の部族」はネイティブ・アメリカンだったり日本人だったり。今回はそれを宇宙に置き換え、地球人vs惑星パンドラの住人ナヴィ族の対立が描かれる。

この設定が秀逸。
本作は3D映画の新しい地平を切り開いた作品であるが、もし内容が「ターミネーター」や「タイタニック」の延長のようなSFアクションやヒューマンな感動大作だったら、たとえ高い評価を得てもエポックメーキングな映画にはなりえなかったと思う。ナヴィ族という全く新しい存在、架空の世界を描いた、「見たこともない世界観」が本作に強烈な新鮮味を与えていて、それが3Dの新しい技術にマッチしているからこそ、衝撃を与えているのだ。新しい技術で気合いの入った映画を作るなら、映画自体が新しいものでなければならないということを、キャメロンはよくわかっているのだと思う。

冒頭から緊張感に満ちたゴージャスで厚みのある映像の連続。パンドラの大自然は言うまでもなく、地球人たちの基地や宇宙船の映像に至るまでぬるさ無し。
それにしてもパンドラの映像は本当に美しい。私はこれまでどんなCGも本物の自然の映像にはかなわないと思っていたのだが、ちょっと考えを改める気になった。それは3Dの深みと臨場感のせいもあるかもしれない。雄大な大自然だけでなく、そこに住む動物たちも、一つ一つ豊かな個性と色彩で描かれ、動きもまったく嘘っぽさがない。

ナヴィ族の造形も素晴らしく、最初は違和感を感じるが、主人公ジェイクがナヴィ族に馴染んでいくくらいのスピードで、こちらもナヴィ族を見慣れ、ヒロインのネイティリを美しくセクシーだとすら感じるようになる。じつにいいセンス。

このパンドラとナヴィ族の作りこみの素晴らしさこそが本作のキモ。それを3Dでまるで自分がそこにいるかのように楽しむことができるのが素晴らしい。



これまでこの手の筋書き、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」や「ラストサムライ」って結局ネイティブアメリカンや日本人の文化を理解するふりをして「そんな野蛮な奴らにも理解をしめす白人種の懐の広さ」に陶酔しているだけなのがうかがえて非常に嫌悪感があったのだが、本作にはそういうものが全くない。

まず、文明人であるはずの地球人の方が、悲しいほど古臭く描かれているのだ。宇宙にまで出兵できる高い技術力を持っている者たちなのに、開拓しに来ている会社の担当者は手あかのついた利益追求主義そのままだし、軍隊を指揮する大佐はまるで冷戦時代の遺物のよう。判で押したようなステロタイプの兵士たち。

現実世界の話をすると、大量消費社会、パワーの時代、そういうのって80年代ごろじゃなかったっけか。21世紀に移行するにつれ、盛んに足るを知る文化が注目されたりあちこちでロハス、スローライフが探究されるようになっている。たとえばスタジオジブリは97年にはすでに「もののけ姫」を発表していて、そこでは自然が大切とは言っても文明も捨てるわけにはいかない人間が今後どうやって発展して行ったらいいかの模索がなされているのだ。

つまり、思い通りにならないなら焼き払っちゃえ、というのはものすごく古臭い考え方なんだよね。

一方、ナヴィ族には21世紀のトレンドが満載。前述のロハスやスローライフ、大自然とのチャネリングもそうだし、何といっても情報化社会のキーワード、巨大ネットワークとそれに個々がどれだけ体感レベルでアクセスできるか、をすごく高度な方法で実践している民族なのだから。「マトリックス」で人体にジャックを差し込む姿に興奮した人々は多く、その元ネタとなった「攻殻機動隊」ではその方法は、電脳化した個々がコンピュータ・ネットワークにアクセスし通信する手段だった。まさにナヴィ族がやっていることと同じ。そしてナヴィ族の方法の方が、ずっと洗練されていて美しい。

※余談だが本作では大佐が乗るマシンも「攻殻機動隊」の作者士郎正宗の著作からの影響が見て取れる。キャメロンこういうの好きそう。

さらにナヴィ族はデザインも美しい上に人類より体が大きく体力的にも優れていて、飛竜のような大鳥に乗って空を駆けたりするのだ。キャメロンの考える理想の民族かも。
この空を飛ぶシーンがもう半端じゃない気持ちよさで、3D映像の真骨頂を堪能できる。

計算されつくした豊かな世界観の中で展開されるシンプルで夢のあるストーリィ。映像は言うまでもなく上々、そして演出も実にツボを抑えて長尺が全く飽きず、あっという間。大佐を倒すところなんて、思わず「こうでなくちゃ」とつぶやいてしまったくらい。
戦闘シーンも長くても全く退屈するところもなく、終始ワクワクしっぱなし。エイワが答えたシーンでは感涙もしちゃったり。


大型TVやビデオ、DVDが普及し、他の娯楽も増えて映画館での映画に昔ほどの魔法のような魅力がなくなった現代だが、3D映画を体感することで、再び以前のような夢みたいにわくわくする気持ちを味わった気がする。
私の場合子供が生まれてなかなか映画館に行けなくなったので特に、映画館で映画を見ることが特別に楽しみなイベントだと感じるようになった。その貴重な機会がこんなに素晴らしい映像体験だということがとても嬉しい。

ところで本作、実は3歳の娘がものすごく見たがっている映画だったりする。でもさすがに映画館で静かにしていられない年齢なのでその要望は非情に却下したが。子供にもアピールする映像。キャメロン恐るべし。
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コメント 10

ken

地球人とナヴィ族の描き方に関する考察が秀逸です。
素晴らしい分析だと思いました。
僕はなぜナヴィ族が人間よりも大きく設定されているのか
その理由を長い間考えていたのですが、satocoさんのレビューを拝見して、
自然に生きる生物として、自身を守るために進化した結果なんだなと、
思い至るようになりました。あー、スッキリw
by ken (2010-01-26 16:26) 

hash

こんばんは。
やはり、IMAXシアターは一味違うようですね。
それにしても、素晴らしいレヴューです。
また、観たくなりました。
by hash (2010-01-26 22:33) 

satoco

>タケルさん
nice! ありがとうございます。

>kenさん
ナヴィは地球人より優れた、というか進んだ種族として設定されていると思いますね。それが大きさにも表れているように思います。パンドラは地球より重力が小さいので背が高くなる進化が起こりますね。
nice! ありがとうございます。

>noelさん
nice! ありがとうございます。

>hashさん
IMAXシアターよかったです。私ももう一度観たいのです。今度は吹き替えで観てみたいです。
過分なお言葉、大変光栄です。
nice! ありがとうございます。
by satoco (2010-01-29 02:08) 

カオリ

IMAXで観たかったな〜と羨ましくなりました。
ナヴィ族の洗練された社会の姿や能力はほんとに進化系だと思いました。ほんとにいろんな角度から楽しめる作品で、satocoさんのレビューを読んでいたら、もう一度観て、いろいろ感じてみたくなりました。
by カオリ (2010-01-29 18:15) 

satoco

川崎のIMAXはIMAXとしては簡易版らしいですよ。以前あった新宿や品川のIMAXシアターはフルスペックだったらしいですが...このまま3D映画が発展していくなら都心そばにいずれフルスペックのIMXシアターができる日もそう遠くないですかね~。

私ももう一度見たいです。
nice! ありがとうございます。
by satoco (2010-01-30 09:06) 

カオリ

品川のIMAXシアター跡は普通の映画館に衣替えしていて、以前「007/慰めの報酬」を見ました。すごく大きなスクリーンで、そこにものすごく角度のついた客席が設置されていて、大迫力でしたねー。それと比較すると、やっぱり川崎のIMAXは劇場の作りがそもそも違うので、簡易版なのだなぁと「THIS IS IT」を観に行った時思いました。でも、3Dのメガネが軽いというのは、それだけでメガネっこのワタシにはありがたいです(笑)
by カオリ (2010-01-30 17:01) 

DSilberling

IMAXは、普通の映画館とアスペクト比が違いましたね。
普通の映画館ではシネスコ上映でした。
by DSilberling (2010-02-10 12:18) 

satoco

>カオリさん
私は新宿にIMAXシアターがあった当時に行ったことがあるのですが、やはりそんな感じの劇場でした。普通の映画館とはかなり違うと思いました。でも川崎がんばってますね。

>DSilberlingさん
シネスコだと上下が少し切れてしまうようですね。もったいないです。
nice! ありがとうございます。
by satoco (2010-02-11 02:06) 

蓮花

もうすぐ観るからとsatocoさんのレビューを読まずに行ったのが悔やまれます。もう少し前で観ればえがったーーーー!
地球人とナヴィ族の比較がとても素晴らしいです~。
うんうんとうなずきながら拝見しました。
地球人は、いっときのデヴェロッパーという言葉を連想させました。
おこがましいですが、TBさせてくださいね。

by 蓮花 (2010-02-13 19:15) 

satoco

TBありがとうございます。普段の映画だとちょっと後ろ目で見るほうがいいんですよね。そういう習慣ついているとなかなか前の方の席は取らないですよね。
nice! ありがとうございます。
by satoco (2010-02-16 17:03) 

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